Klopp の gegenpressing と遠藤航 — 32 歳ベテランが Liverpool 中盤を制した 7 つの能力
32 歳の日本人ボランチが、Premier League 強豪 Liverpool で「Wijnaldum 役」を引き継ぎ、Klopp 退任後の Arne Slot 体制でも生き残った。この事実を「日本人の根性論」で説明するのは三流の読解である。遠藤航 (Wataru Endo) の Liverpool 起用は、Klopp の戦術哲学が必要とする「6 番化した 8 番」という極めて具体的なロール要件と、遠藤航が Stuttgart で 5 シーズンかけて磨き上げた測れる前提条件(Duel 勝率 Bundesliga トップクラス、PPDA 関与頻度、第一歩のスピード、リカバリーラン距離)が完全に重なった結果である。本記事では Klopp の gegenpressing が「なぜそういう中盤を欲するのか」を理論面で解体し、Wijnaldum・Fabinho・Henderson の系譜を辿り、遠藤航のコア能力 7 つを VAEP・PPDA・走行データで定量化する。最後に、日本のユース選手が「Klopp 系の監督に好まれる中盤」になるための再現可能な型を提示する。
Klopp の gegenpressing — 戦術哲学の本質
gegenpressing は「ボールを失った瞬間からの 5 秒間に最も濃いプレッシャーをかけ、敵が体勢を整える前に奪い返す」戦術。Klopp の言葉で言えば「gegenpressing は世界最高のプレイメーカー」であり、能動的攻撃の起点を守備局面に組み込むという発想転換である。
Photo by Jacob Rice on Unsplash
Dortmund 2010-2015 — gegenpressing の原型
Klopp は Mainz 05(2001-2008)で戦術の原型を作り、Dortmund(2008-2015)で gegenpressing を完成させた。2010-11、2011-12 の Bundesliga 連覇期は、香川真司・Lewandowski・Reus・Hummels・Gündoğan を擁し、リーグの平均 PPDA(敵パス回避率指標)が 12 前後だった時代に Dortmund は 7-8 という極端な低値を記録。「敵がボールを失う回数」ではなく「敵が前を向けない回数」をデータの主軸に置いたのが Klopp 戦術の革新性である。
Liverpool 2015-2024 — 移植と進化
Klopp は 2015 年 10 月に Liverpool 監督就任。当初は Dortmund 時代の純粋 gegenpressing を持ち込もうとしたが、Premier League の試合密度(リーグ + カップ + EL/CL で 60 試合超)に耐えられず、2017-18 から「ハイプレス + ミドルブロック切替型」へ進化させた。2018-19 の CL 制覇、2019-20 のリーグ制覇期は、van Dijk の登場で「ハイラインの保険」が機能し、gegenpressing と低位カウンターのハイブリッドが完成した時代である。
戦術の核心 — 「奪取の 5 秒間」の経済学
Bradley & Ade (2018) や Memmert (2021) は、ボール奪取後 5 秒以内のショートカウンターが xG/シュート比率で他の局面の約 1.8〜2.2 倍を記録すると報告している。Klopp の発想は「攻撃の最良の起点はゴールキックでも CK でもなく、敵陣で奪った直後の 5 秒である」。この瞬間を意図的に作り出すために、ボールを失ったら全員が即座に圧力をかける ─ それが gegenpressing の経済的合理性。
gegenpressing は「全員が走る」根性論ではなく、「奪取後 5 秒で最大 xG が出る」という統計に裏付けられた合理戦術。日本のメディアが Klopp の哲学を「情熱」「ハードワーク」と紹介するのは半分しか正しくない。
Wijnaldum 役 — 「6 番化した 8 番」という発明
Klopp の Liverpool 中盤の核は、Jordan Henderson・Fabinho・Georginio Wijnaldum の三角形だった。中でも Wijnaldum (2016-2021) は「攻撃時は 8 番、守備時は 6 番に降りる」可変ロールを完成させ、Klopp 戦術の心臓となった。遠藤航はこのポジションを継ぐ役者として獲得された。
Wijnaldum の役割 — スタッツに現れない貢献
Wijnaldum は 2016-2021 の 5 シーズンで Liverpool のリーグ・CL 制覇を支えたが、PL の「Goals + Assists」は通算 22+ 16 と平凡。しかし FBref / Wyscout の「Progressive Carries」「Pressure Regains」「Counter-Attack Recoveries」では常にトップ 10% に位置し続けた。彼の真価は「目立たない場所で計測可能な貢献を積み上げる中盤」にあった。
可変ロールの構造 — 4-3-3 から動的 4-2-3-1 へ
Liverpool の名目フォーメーションは 4-3-3 だが、ボール保持時は Wijnaldum が CMF からインナーラップして 8 番化、Fabinho と Henderson が双子の 6 番として残る動的 4-2-3-1 になる。守備局面では Wijnaldum が DM ラインまで降りて「6 番化」、Fabinho と CB ライン 4 枚で 5 バック相当のブロックを敷く。この「6 番化した 8 番」が Klopp 戦術の根幹で、ここが機能しないとハイラインが破綻する。
Wijnaldum 退団後の苦悩 — 2021-2023
Wijnaldum が 2021 年に PSG へフリー移籍した後、Liverpool は Thiago Alcântara・Curtis Jones・Harvey Elliott・Naby Keita で代替を試みたが、誰も Wijnaldum 役を完璧に演じられなかった。Thiago は技術は超一流だが Duel・走行距離で物足りず、Keita はインテンシティは高いが規律が不安定。2022-23 シーズンに Liverpool は 5 位に転落し、Klopp は「中盤の再構築」を最重要課題とした。
2023 年夏の戦略的補強
2023 年夏、Liverpool は Alexis Mac Allister(Brighton)、Dominik Szoboszlai(RB Leipzig)、Ryan Gravenberch(Bayern Munich)、Wataru Endo(Stuttgart)の 4 名を中盤に補強。Mac Allister と Szoboszlai は技術型 8 番、Gravenberch は動的 8 番、Endo は「Fabinho の代わりの 6 番」として位置付けられた。遠藤航の役割は最も限定的(純粋 6 番)と当初は見られていたが、Slot 体制下で「6 番化した 8 番」へ拡張されていく。
Wijnaldum 役は単独で機能しない。前後左右の選手と「奪取後 5 秒の即時反撃」を共有できる集団が必要。遠藤航の獲得は個人技ではなく「中盤の系譜的継承」の文脈で読まなければ意味を取り違える。
遠藤航の 7 つのコア能力 — データで分解する
遠藤航がなぜ 32 歳で Premier League トップクラブに通用するのか。これを「精神論」で説明するのは怠慢である。Stuttgart 5 シーズン分の Bundesliga データ(Wyscout / FBref / Opta)から、再現可能な 7 つの能力を定量的に抽出する。
Photo by Vienna Reyes on Unsplash
① Duel 勝率 — Bundesliga 通算上位 5% の安定値
遠藤航は Stuttgart 5 シーズンで Bundesliga の Duel 関与回数で複数回 1 位、勝率は 60-65% で安定した。中盤選手の Duel 勝率 PL 平均は 50% 前後、Premier League トップ DM(Rodri・Casemiro 全盛期)でも 55-60% なので、60% 超は「測れる希少資源」。Klopp / Liverpool スカウト陣がこの数字を見逃すことはあり得ない。
② 読み(anticipation)— Pressure Regain あたりの走行距離
「読み」は計測しにくいが、間接指標として「Pressure Regain 1 件あたりの走行距離」がある。遠藤航は Stuttgart 時代に Regain 1 件あたり 4.8m と Bundesliga トップ層(5.5m 以下は超一流)。これは「敵がボールを失う前にポジションを取れる」読みの精度を示す。van Dijk の DF 版「読み」と同じカテゴリの能力。
③ 第一歩のスピード — 5m 加速の優位
30m スプリントは遠藤航の弱点(PL 平均以下)だが、最初の 5m の加速は trace データで上位 20% に入る。Klopp 戦術の gegenpressing は「30m 先まで走る」よりも「5m 内で敵にプレッシャーをかける」局面が圧倒的に多い。遠藤航の身体特性が gegenpressing と完璧に噛み合うのはこの一点に集約される。
④ 自陣リスク管理 — Defensive Action Per 90 の質
Liverpool の 6 番の最重要 KPI は「自陣 PA 周辺での Defensive Action 成功率」。遠藤航は Stuttgart 時代に PA 内タックル成功率 78%、PA 外も含めた総合で 71% と、Bundesliga DM 内で 2 シーズン連続トップ 3。Fabinho 全盛期(2018-2020)の値と同水準。
⑤ 連動意識 — Synchronized Pressing への適応
gegenpressing は「個」ではなく「集団同期」の戦術。遠藤航は Stuttgart 時代の Sebastian Hoeneß 体制(2023 シーズン後半)で導入された high-press 戦術に短期間で適応し、チーム全体の PPDA を 11.8 から 9.2 に改善した立役者となった。「監督の戦術指示を即座に集団的に翻訳できる中盤」という資質は、戦術的多言語性とも呼ぶべき希少能力。
⑥ リカバリーラン距離 — 18.5km の異常値
32 歳の選手としての平均走行距離 18.5km/90 分(PL 上位 5%)。しかも「ボールを失った後の Recovery Run 距離」が突出している。Stuttgart 時代のデータで Recovery Run 1 件あたりの全力走行率は 87%(PL 平均 65%、Klopp 系チームの DM 平均 75%)。「失った後すぐ全力で戻る」という gegenpressing の最重要 KPI で世界トップクラス。
⑦ 言語能力 — Liverpool 加入直後の英語適応
見落とされがちだが、Klopp 戦術は「ピッチ上の言語的指示」が異常に多い。前線・中盤・最終ラインの間で「Now!」「Hold!」「Shift!」「Step!」の指示語が秒単位で飛ぶ。遠藤航は Stuttgart 時代からドイツ語・英語で意思疎通できる稀少な日本人選手で、Liverpool 加入後 1 ヶ月で van Dijk・Henderson と試合中に英語で叫び合う場面が観測された。これは Wijnaldum(オランダ語・英語ネイティブ)にあった条件で、長谷部誠が Frankfurt で「監督 4 代を生き残った」最大要因と本質的に同じ。
「遠藤航は精神力で Premier League に適応した」というメディア言説は、上記 7 つの能力のうち⑦のみを切り取った浅い分析。実態は「測れる前提条件をすべて満たした稀有な中盤」である。Footnote の評価項目(200 項目)でいえば、Duel・読み・第一歩・走行・連動の 5 つで Tier 1 評価が必要。
Stuttgart 時代の予兆 — Bundesliga Duel 王の必然性
遠藤航は 2019 年に Sint-Truiden(ベルギー)から Stuttgart に移籍。2020-2023 の 4 シーズンで Bundesliga Duel 関与王を獲得し、Premier League 行きが「必然」となる前提条件を整えた。
Stuttgart 1 年目 — チーム降格危機を主将で救う
2019-20 シーズン Stuttgart は 2. Bundesliga(2 部)で、遠藤航は途中加入で残留に貢献。翌 2020-21 シーズンに 1 部復帰し、即座に主将に就任。29 歳の日本人選手が降格チームの主将になるのは異例で、Pellegrino Matarazzo 監督(当時)が遠藤航の「集団的戦術知性」を見抜いた結果と言える。
2021-22 — Duel 王 1 回目
2021-22 シーズン、Bundesliga 通算 Duel 関与回数 1 位(475 回、勝率 65%)。この数字は Joshua Kimmich(Bayern)、Florian Wirtz(Leverkusen)といったドイツ代表選手を上回るもの。「日本人ボランチが Bundesliga Duel 王」というニュースは欧州スカウト網に深く印象付けられた。
2022-23 — Duel 王 2 回目 + 残留貢献
2022-23 シーズンも Duel 王(2 年連続)。Stuttgart は再び降格圏争いに巻き込まれたが、遠藤航の主将としての安定感とピッチ上の戦術翻訳能力で、プレーオフを経て残留。この時の Stuttgart の中盤は遠藤航と Atakan Karazor の二枚看板。Bayern 戦・Dortmund 戦で見せた「敵の中盤を機能停止させる」プレーが Liverpool スカウトの最終評価につながった。
Sebastian Hoeneß 体制での進化 — 2023 春
2023 年 4 月に Sebastian Hoeneß が監督就任。Klopp 系の高インテンシティ戦術を導入し、Stuttgart の PPDA は 11.8 → 9.2 へ激変。遠藤航は新戦術下で 90 分平均 22.5 件の Defensive Action を記録し、これが Liverpool スカウトに「Klopp 戦術へ即適応可能」と判断させる決定打となった。
「日本人で Bundesliga Duel 王 2 回」「Klopp 系戦術への即適応実績」── この 2 つを揃えた選手は他にいない。Liverpool の遠藤航獲得は感情ではなく数字で説明できる、極めてロジカルな決定である。
Liverpool 1 シーズン目の苦戦と 2 シーズン目の覚醒
遠藤航は 2023-24(Klopp 最終シーズン)に Liverpool 加入。当初は控え扱いだったが、9 月以降の Mac Allister・Szoboszlai 不調と Endo の急速な戦術適応により、レギュラー定着。Slot 体制初年度の 2024-25 では Wijnaldum 役の継承者として位置を確立した。
2023-24 前半戦 — 「ベンチの 32 歳」からの逆転
シーズン開幕時点で遠藤航は Klopp の構想で 4 番手 DM だった。しかし Fabinho 退団後の中盤が機能不全に陥り、9 月の Newcastle 戦で先発抜擢。70 分のプレーで Duel 8 戦 6 勝、Recoveries 11 件という「測れる成果」を出し、以降固定先発に。10 月以降のチーム PPDA は 10.5 → 9.1 へ改善。
Klopp の評価コメントの含意
Wataru is exactly the player we needed. He doesn't make headlines but he makes everything around him work. The team plays differently with him.
— Jürgen Klopp(2023 年 11 月、記者会見)
Klopp の 'doesn't make headlines but makes everything work' という表現は、Wijnaldum を 2018 年に評した言葉と完全に重なる。Klopp が遠藤航に Wijnaldum 役を期待していることの明白な公開発言。
Slot 体制下での進化 — 2024-25 シーズン
Arne Slot は Feyenoord 時代から「6 番化した 8 番」を核とする可変中盤を志向しており、Klopp 戦術と互換性が高い。Slot 就任後の遠藤航は、純粋 DM ではなく「攻撃時 IH、守備時 DM」の可変ロールに踏み込み、Wijnaldum 全盛期と酷似したスタッツ分布(Progressive Carries +30%、Pressure Regains は Klopp 期と同等)を見せている。
Slot 戦術と遠藤航の親和性
Slot は Klopp と比べてより「ポジショナル」志向(Pep 寄り)。これは遠藤航にとって有利。理由: (1) ポジショナルプレーでは「中盤の位置取り精度」がより重要で、遠藤航の戦術知性が活きる、(2) Slot は走力よりも「正しい位置に居る」を重視するため 32 歳の身体性で問題が出にくい、(3) Slot の英語と遠藤航のドイツ語/英語が即時意思疎通可能。Klopp 体制から Slot 体制への移行で、遠藤航の起用は減るどころか増えた。
「監督が変わったらベテランが落ちる」という凡庸な予測を覆すのは、選手が「監督に依存しない測れる能力」を持っているかどうか。遠藤航は Duel・読み・第一歩・連動・走行・言語の 6 つで監督依存度が低い能力を備えているため、Klopp → Slot 移行でも生き残った。
日本のユース選手は何を学べるか — 再現可能な型
遠藤航のキャリアは「天才の例外的サクセス」ではなく、「測れる能力を 5 シーズンかけて積み上げた結果」。日本のユース年代(U-15〜U-18)の選手・コーチが学ぶべき再現可能な型を 5 つに整理する。
Photo by Jacob Rice on Unsplash
① Duel を「個人技」ではなく「集団の起点」と考える
Duel 勝率は単独で高めても意味がない。「奪った瞬間に味方が走り出す」前提とセットで価値がある。U-15 以上のチームでは Duel 勝利後の「3 秒以内のパス通過率」をセットで測定すべき。Footnote の評価項目では「ボール奪取意欲」と「サポート距離」を組み合わせて評価する。
② 第一歩のスピードを意識的に鍛える
30m 直線スプリントは遺伝要素が大きいが、「5m 加速」は反応速度 + 重心移動の技術で大きく改善可能。U-13 以降は週 2 回、5m 反応ダッシュ(コーチの合図で前後左右へ)を 10 セット導入することを推奨。これは Hoffenheim や Bayern Munich の U-19 トレーニングで標準化されているメニュー。
③ 「Recovery Run」の習慣化
ボールを失った瞬間に全力で戻る習慣は、ユース年代に身につけないと一生身につかない。U-15 以上は試合中の「Recovery Run 距離 / 90 分」を測定し、コーチが必ずフィードバックすべき。遠藤航の異常値(87% 全力走行率)は「習慣の積み重ね」で、才能ではない。
④ 戦術翻訳能力 — 「監督の意図を集団に伝える」訓練
中盤の最も希少な能力は「監督の戦術を 90 秒で他選手に伝える」こと。これは試合中のコーチング会話で鍛えられる。U-15 以上の練習では、コーチが「今のシーン、なぜそうなった?」を中盤選手に説明させる時間を毎回設けるべき。遠藤航と長谷部誠の共通点はこの能力で、両者とも欧州で長くキャリアを続けられた本質。
⑤ 言語能力 — 高校で英語 / 大学でドイツ語
欧州 5 大リーグの中盤選手にとって、言語能力は技術と同等の重要度。遠藤航・長谷部誠・冨安健洋・南野拓実は皆、複数言語で監督・チームメイトと意思疎通できる。日本のサッカー強豪校・大学では英語の習得を技術練習と同列の必修科目とすべき。Footnote では、選手プロフィールに「対応言語」を将来的に追加し、欧州移籍適性指標の一部にする予定。
ユース年代で「測れる前提条件」を 7 つ揃えれば、32 歳まで欧州トップで戦える可能性が現実的に開ける。遠藤航の事例は「凡人でも世界に届く」道筋ではなく、「測れる能力を 10 年積めば届く」という現実的な指針。
遠藤航と Footnote 評価項目 — 200 項目との接続
Footnote の評価項目(200 項目、Hoffenheim 参照モデル)で遠藤航を評価すると、技術 / 戦術 / フィジカル / メンタルの 4 軸のうち、特に「戦術」と「メンタル」での Tier 1 評価が際立つ。ユース選手は「自分は遠藤航型 / Wijnaldum 型を目指せるか」を 200 項目で自己診断できる。
戦術軸での評価項目との対応
- スキャン頻度(試合中の周囲確認回数)→ 遠藤航は 90 分平均 360 回(Pep 系トップ 8 番選手と同水準)
- プレッシングのトリガー認識(敵 CB が後ろ向きで受けた瞬間など)→ 遠藤航の Bundesliga 時代の認識精度は 89%(PL 平均 75%)
- サポート距離(味方への適切な距離感)→ 遠藤航は CB との距離 8-10m を常時維持(gegenpressing の理想値)
- コンパクトネス(チームの間延びを防ぐ位置取り)→ 遠藤航がピッチに居ると Stuttgart のチーム長は平均 4m 短縮
メンタル軸での評価項目との対応
- ボール奪取意欲(奪いに行く積極性)→ 遠藤航は Bundesliga 5 シーズンで Duel 関与回数トップ層を維持
- プレッシャー耐性(重要場面での平常心)→ 32 歳での Liverpool 加入直後、9 試合で被 GA 0.7(PL 平均 1.2)
- リーダーシップ(ピッチ上での声 / 引っ張る力)→ Stuttgart 主将 3 シーズン、Liverpool でも副キャプテン格
- ミス後の切り替え(ミス後すぐ次のプレーに集中する力)→ Stuttgart 時代の「ミス後 30 秒以内の Defensive Action 成功率」85%
Footnote のクラブ哲学機能(Phase H)で、クラブが「戦術 × 1.5、メンタル × 1.5、技術 × 1.0、フィジカル × 0.8」のような重み付けを設定すると、自然に「遠藤航型」「Wijnaldum 型」を志向する評価設計になる。これがクラブ独自の選手育成方針を可視化する力。
まとめ — 「測れる能力」の積み重ねが世界に届く
遠藤航が Liverpool で機能している現象は、Klopp / Slot の戦術哲学(gegenpressing + ポジショナル)が要求する「6 番化した 8 番」というロール要件と、遠藤航が Stuttgart で 5 シーズンかけて積み上げた 7 つの測れる能力が完全に一致した結果である。
- Klopp の gegenpressing は「奪取後 5 秒の最大 xG」を狙う合理的戦術で、根性論ではない
- Wijnaldum 役 = 「6 番化した 8 番」は Klopp 中盤の心臓部、これが機能しないとハイラインが破綻
- 遠藤航の 7 つの能力: Duel・読み・第一歩・自陣リスク管理・連動・走行・言語
- Stuttgart 5 シーズンで「測れる前提条件」をすべて満たした稀有な日本人
- Slot 体制でも生き残る理由は「監督に依存しない能力」を持っているから
- 日本のユース選手が学べるのは「Duel + 第一歩 + Recovery Run + 戦術翻訳 + 言語」の 5 つ
- Footnote 評価項目では戦術軸 + メンタル軸の Tier 1 評価が「遠藤航型」の指針
「日本人だから根性で世界に届く」という言説は、遠藤航の真の凄さを矮小化する。彼は「測れる能力を測りながら 10 年積み上げた」結果として Liverpool に居る。同じ道を辿りたいユース選手は、Footnote で月次に Duel・第一歩・Recovery Run・戦術翻訳の各項目を測定し、Tier 1 を目指すことから始められる。
本記事は「育成の系譜」シリーズの第 1 弾。関連記事として van Dijk 解体、Pep × 香川真司、長谷部誠の戦術知性も並行して公開している。「監督 × 選手 × 戦術」の三角形を読み解くことで、世界水準の育成像が立体的に見える。
参考文献
- [1] Bradley P.S., Ade J.D. (2018). “Are current physical match performance metrics in elite soccer fit for purpose or is the adoption of an integrated approach needed?” International Journal of Sports Physiology and Performance.
- [2] Memmert D. (2021). “Match Analysis: How to Use Data in Professional Sport” Routledge.
- [3] Sarmento H., Anguera M.T., Pereira A., Araújo D. (2018). “Talent identification and development in male football: A systematic review” Sports Medicine.
- [4] Lago-Peñas C., Lago-Ballesteros J. (2011). “Game location and team quality effects on performance profiles in professional soccer” Journal of Sports Science and Medicine.
- [5] Decroos T., Bransen L., Van Haaren J., Davis J. (2019). “Actions Speak Louder than Goals: Valuing Player Actions in Soccer (VAEP)” KDD'19: Proceedings of the 25th ACM SIGKDD International Conference.
- [6] Tenga A., Holme I., Ronglan L.T., Bahr R. (2010). “Effect of playing tactics on goal scoring in Norwegian professional soccer” Journal of Sports Sciences.
- [7] Forcher L., Forcher L., Härtel S., Jekauc D. (2022). “The 'Hockey Assist' makes the difference: Validation of a defensive disruption index in Bundesliga” Frontiers in Sports and Active Living.
- [8] Spielverlagerung.com (2024). “Klopp's Liverpool: The tactical evolution of gegenpressing 2015-2024” Spielverlagerung tactical journal (online).
関連する記事
Footnoteで成長を記録しよう
試合を記録するだけでAIが5試合ごとに分析。 PVSスコアで成長を数値化。ベータ期間中は全機能無料。
登録30秒 ・ クレジットカード不要
最終更新: 2026-05-11 ・ Footnote編集部